歯を失った場合に用いられる治療法として、インプラントはよく耳にすると思いますが、どのような材質で作られているのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
インプラントは主にチタンから作られていて、チタンの中でも純チタンという材質が多く使用されています。
ここではインプラントに用いられるチタンの性質や種類について紹介します。同じくインプラントに使用されるジルコニアとも比較してまとめているので、インプラントの材質選びで迷っている方は参考にしてみてください。
インプラントの人工歯根とは?
インプラント治療は、人工歯根治療とも呼ばれます。人工歯根とは、歯を失ってしまった場所のあごの骨にネジを埋め込み、人工の歯冠を取り付ける治療法です。あごの骨と人工歯根を結合させた後に人工歯冠を取り付けるため、自分の歯と同じように噛むことができます。
人工歯根は主にチタンで作られています。チタンは生体親和性が高く、人の体でアレルギーを起こしにくいことから、歯科や整形外科でよく利用される材料です。また強度が高く、半永久的に状態を保てることも特徴です。
チタン製のネジの表面は、骨と結合しやすくなるように加工されていて、埋め込まれてから平均で6~12週間後に骨と結合します。
人工歯根に使われるチタンの種類
人工歯根に使用されるチタンの種類には、純チタン、チタン合金、チタン・ニッケル合金の3つがあります。それぞれの特徴について詳しく解説します。
純チタン
純チタンとは、チタンが99.8%以上のものを指します。純チタンは、純度の高い順に1~4種に分類されています。1種は不純物が少なく、柔らかく弱いのが特徴です。一方、4種は不純物が多いため硬くて強度があります。2種と3種がその中間で、インプラント材に使われるのは、ほとんどが2種です。
純チタンは生体親和性が高く、あごの骨と結合しやすいのが特徴です。また、化学的に安定した金属なので、経年変化が起きにくく、多くのインプラントメーカーが純チタンを使用しています。
チタン合金
チタン合金は、チタンを主な材料とした合金のことです。チタンにパナジウムやアルミなどの金属を混ぜ合わせています。インプラント治療では、純チタンの4種でも強度が不足する場合に用いられます。
純チタンと比べると強度が増しますが、金属が含まれているため、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。また、金属が入っている分、生体親和性が低くなることや、経年劣化が起きやすいことがチタン合金のデメリットです。
チタン・ニッケル合金
チタン・ニッケル合金は、成形しやすいことが特徴で、形状記憶合金ともいわれます。インプラント治療に用いられますが、ニッケルが溶け出すリスクがあります。また、チタン合金よりもさらに生体親和性が低く、骨への結合がしにくいとされています。
チタン製インプラントの歴史についてさらに知りたい方は『【インプラント治療の歴史】チタン製が誕生したのはいつ?』で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参照:吉野、正雄「(PDF)インプラント材料とその表面:その1.インプラント材としてのチタン」歯科学報,103(5):313-319
ジルコニアでできた人工歯根とは?
ジルコニアは、人工ダイヤモンドといわれるほど、強度が高いセラミックです。また、チタンと同じように骨と結合する性質を持っていて、天然の歯と同じようにしっかりと噛むことができます。
生体親和性に優れているため、体によくなじみやすく、耐熱性や耐薬品性も高いのも特徴です。そのほか、汚れや歯垢がつきにくく、チタン製のインプラントに比べて歯肉炎になりにくいとされています。
チタンも金属アレルギーを起こしにくい素材ですが、ジルコニアは金属を使用していないため、金属アレルギーの心配がありません。そのため、金属アレルギーがある方は、ジルコニアインプラントを選ぶといいでしょう。
ただ、ジルコニアはチタン製のインプラントに比べて生産コストがかかるため、20~30%費用が割高になります。チタン製のインプラントの相場は、1本あたり30~50万円といわれていますが、ジルコニアでは、1本あたり50万円以上かかるケースが多くなっています。
人工歯根には主にチタンが使われている
今回解説したように、人工歯根(インプラント)には、主にチタン製のネジが使われています。チタンは生体親和性が高く、あごの骨と人工歯根が結合すると、天然の歯のように噛めるようになるのが特徴です。
インプラントに使用されるチタンには、純チタン、チタン合金、チタン・ニッケル合金などがあり、種類によって強度が変わります。金属が含まれている種類もあるので、金属アレルギーが心配な方は、治療を受ける前に医師に確認しましょう。インプラント治療を検討中の方は、人工歯根の材質にもこだわって選んでみてください。