失ってしまった歯を補うことができる方法として人気のインプラント治療には様々な選択肢があり、失ってしまった歯の範囲が広い方には、オールオン4(フォー)インプラントと呼ばれる治療法が向いています。
オールオン4インプラントとはどのような治療法なのか、気になる特徴や費用の相場、メリット、デメリットなどについてご紹介するので、参考にしてみてください。
オールオン4インプラント(All-on-4)とは
オールオン4インプラント(All-on-4)とは、最少4本のインプラントを埋め込むだけで上、または下のどちらかすべての歯を支えることができる治療法です。
通常、インプラント治療では失ってしまった歯1本に対し、1本のインプラントを埋入しますが、最大12本連結されている人工歯に、4本のインプラントが取り付けられているのも特徴です。
オールオン4インプラントの場合は、総入れ歯の形状をした上部構造を最少4本のインプラントで固定できるので、1本ずつインプラント埋入するのに比べて費用を抑えられるのが魅力だといえるでしょう。
また、まとめて治療ができるので、早急に見た目と噛み合わせ機能の回復を図れる治療法として多くの方に選ばれています。
オールオン4インプラントの費用相場
オールオン4インプラントを受ける場合の片顎あたりの費用相場は、160~400万円程度です。金額にかなりの幅がありますが、自費診療であるため治療を受ける歯科医院により大きく異なります。また上部構造の素材により金額が変わることため、予算も含め歯科医院と相談をすることが大切です。
オールオン4インプラントの費用の内訳は、以下のとおりです。
カウンセリング・検査代 | 1,500~5,000円 |
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インプラント代 | 100~200万円 |
被せ物代 | プラスチック:60~100万円 ジルコニア:150~200万円 |
総額 | 160万円~400万円 |
費用だけを見ると高額だと感じられるかもしれませんが、通常のインプラントは1本1本を埋めていくのに対して、オールオン4インプラントでは片顎で12本のインプラントを支えられます。
そのためインプラントの希望本数によっては、通常のインプラント治療を受けるよりも手頃な費用で治療を完了させられることもあるでしょう。
片顎あたりの費用は100~200万円程度です。上下ともにオールオン4インプラントにし、すべての歯をインプラントにする場合、倍の費用がかかることになります。
カウンセリング費用や検査費用は通常のインプラント治療とほぼ変わりがありません。しかし被せ物代はオールオン4インプラントの治療費用に大きな差が生じる原因の一つとなります。
インプラントにおける上部構造とは被せ物のことであり、歯に相当する部分です。プラスチック製であれば100万円以内に抑えられることもありますが、審美性や使い勝手に優れるジルコニア製の上部構造を選んだ場合は、150~200万円ほどの費用がかかります。
以上の要素をすべて合計して、トータルで行った場合の費用は、片顎あたり250万円~350万円ほどです。この金額に比べ、あまりにも安い場合は、正しい施述・工程以外で行われている可能性があるので注意しましょう。
かなり高額ではありますが、通常のインプラント治療では1本あたり32万円~40万円ほどの費用がかかるため、仮に片顎12本を1本ずつインプラントにすると384万円~480万円もかかる計算です。この金額に比べると、まとめて治療可能なオールオン4インプラントのほうが費用を抑えることができます。
費用面で通常のインプラント治療を選ぶか、オールオン4インプラントを選ぶかは、埋入したインプラントの本数や場所を考慮したうえで決めるべきでしょう。
オールオン4インプラントのメリット・デメリット
オールオン4インプラントを選択した場合の、メリット、デメリットについてご紹介します。それぞれを理解したうえ、自分に向いているかどうか考えてみてください。
メリット
代表的なメリットは、以下の通りです。
- 食事の喜びを取り戻せる
- 治療当日に仮歯を装着できる
- 審美性に優れている
- 顎骨が急激に痩せるのを予防できる
インプラント治療には長い期間がかかり、従来の治療法では、安静期間にあたる数ヶ月は歯がない状態で過ごさなければならないことがあったのですが、オールオン4インプラント治療であれば、その日のうちに仮歯を装着できるのが大きなメリットです。
見た目は非常に自然で、自分の歯と変わらないので、審美性に優れているのもうれしいポイントといえるでしょう。
また、歯を失ってしまった部分は、咀嚼した際にあごの骨に刺激が伝わらず、これが原因であごの骨が痩せてしまうのですが、インプラントにすれば骨が痩せるのを防ぐことが可能です。
入れ歯ではあごの骨が痩せるのを防ぐことはできないので、インプラントならではの大きな魅力の一つといえます。
デメリット
デメリットについてもおさえておきましょう。
- 定期的なメンテナンスが必要
- 健康保険適応外の治療となる
- 施術できる歯科医師が限られる
なかでも大きなデメリットとして挙げられるのが、費用の問題です。
「歯の悩みを抱えているけれど、300万円前後かかる治療法はなかなか検討できない」という方が多いのではないでしょうか。インプラント治療はすべて自己負担であることから、どうしても治療費が高くなります。
そのため、多くの歯科クリニックではデンタルローンが利用可能なので、相談してみてはいかがでしょうか。また、専門的な治療ということもあり、通常のインプラント治療ができる歯科クリニックだからといって、オールオン4インプラントも可能とは限りません。
施術可能な医師が限られる治療法でもあるので、治療を受けようと考えている歯科クリニックの医師は、十分な実績があるか確認したうえで検討しましょう。
オールオン4インプラント手術の流れ
片顎分をまとめてインプラントにするオールオン4インプラント。一体どのような流れで手術を行っていくのか、全体的な流れを確認しておきましょう。
- カウンセリング
- 術前検査
- 型取り
- インプラント埋入手術
- 第一調整
- 抜糸
- 第二調整
- 型取り
- 最終補填物装着
- メンテナンス
口内の状態や歯科医院により多少流れが変わることがあるかもしれませんが、上記はオールオン4インプラント手術の流れを詳細に記したものです。
まずはインプラント手術に向けてカウンセリングや術前検査、型取りを行った後に、インプラント埋入のための手術を行います。手術後翌日に噛み合わせの調整が行われ、同時に患部の消毒を実施。術後10日ほどで抜糸が行われます。第二調整は必要な場合にのみ行われるため、不要な場合はそのまま最終的な型取りへと進みます。
最終的な型取りは術後6ヶ月ほど経過したころに行われ、型取りから3~4週間後に人工歯をセットしたらオールオン4インプラント治療は完了です。
、その後は3~6ヶ月に1回程度の定期メンテナンスを繰り返し、インプラントを使い続けるようになります。インプラントを長持ちさせるためにも、歯科医院での定期メンテナンスは推奨されるタイミングで必ず受けるようにしてください。
オールオン4インプラント手術を受ける前に知っておくべきこと
オールオン4インプラントは場合により非常に有効なインプラント治療法ですが、手術を受ける前に知っておきたい注意点もあります。オールオン4インプラントを検討されている方は、次の3つのポイントを把握しておきましょう。
歯が残っている場合に治療はできるのか
歯が残っていてもオールオン4インプラント治療は可能です。ただし歯科医院によっては治療不可とされる可能性も考えられるため、治療を検討している歯科医院に直接相談されることをおすすめします。治療可能である場合は、残っている歯はオールオン4インプラント手術当日に抜歯されます。
治療に伴う痛みは強いのか
インプラント治療にあたって「痛み」に不安を抱く方は多いですが、オールオン4インプラント手術では痛みを感じることはありません。局所麻酔がしっかりと効いた状態で手術を行うため、痛みを全く感じないケースがほとんどでしょう。
また痛みに対する不安感が強い場合は、静脈内鎮静法によりリラックス状態にして不安を軽減させることもできます。
高齢者でもオールオン4インプラント手術は受けられるか
オールオン4インプラントは高齢者の方にも適する治療法です。年齢制限は16歳以上から70歳までとされています。しかし健康な方であれば年齢上限は特になく、通常のインプラント手術よりも低侵襲であるためむしろ高齢者の方にこそおすすめします。
ただし高齢者の方は持病があったり体力が低下していたりする場合も多く、持病の重症度によってはオールオン4インプラント手術を適応できないことも考えられます。体力に不安のある方や持病をお持ちの方は、歯科医院にご相談のうえ、治療法を検討してください。
多くの歯を失った場合に画期的な方法
オールオン4インプラントについてご紹介しました。少ない本数で多くの歯を補うことができるので、たくさん歯を失ってしまった方にとって、非常に魅力的な方法といえます。
ただし、ご紹介したようにメリットだけではなくデメリットもあるので、それぞれについてしっかりと理解したうえで検討してみてはいかがでしょうか。