インプラント治療で大事なオーバーホールとは?

インプラント治療を行ううえで欠かせないのが、オーバーホールと呼ばれる洗浄作業です。インプラントは自分の歯と同じように噛むことができる第3の歯と呼ばれており、とても便利なものではありますが、機能性を保つためには定期的なメンテナンスを行わなければなりません。

メンテナンスの中で行われる、オーバーホールとはどのようなものなのかについてご紹介します。

インプラント治療におけるオーバーホールとは

まずはインプラント治療における「オーバーホール」とはどのようなものか、概要やメリット、治療の流れについて総合的に解説していきます。

概要

インプラント治療におけるオーバーホールとは、定期的にインプラントを分解して掃除する作業のことをいいます。自宅で行うことはできないので、歯科クリニックでメンテナンスを受ける際にオーバーホールをしてもらわなければなりません。

腕時計を分解して内部まできれいにする「オーバーホール」というメンテナンスがありますが、インプラント治療におけるオーバーホールも同じことです。

インプラントは入れ歯などとは異なり、歯ブラシなどで自分の歯と同じように掃除することができますが、ブラッシングだけでは細かい部分の汚れを取り除くことができないので、定期的に歯科クリニックでメンテナンスを受ける必要があります。

つまりインプラント治療におけるオーバーホールとは、インプラントを衛生的に保つために欠かせないメンテナンス作業であると言えます。

メリット

インプラント治療におけるオーバーホールには次のようなメリットがあります。

  • 自分では取り除けない細部の汚れまで除去できる
  • 細菌の増殖が深刻になる前に発見できる
  • インプラント周囲炎を予防できる

オーバーホールでは、取り付けているインプラントの器具をすべて取り外し、一つひとつ細かく洗浄することができるので、自分で取り除くことができないような細部の汚れまで落とせるのがメリットです。

普段、インプラントをすべて取り外して、内部まで見ることはありません。そのため、目に見えない場所で細菌が繁殖して炎症が起こっていたとしても、症状として表面化してこなければ気づかないことは多々あるはずです。オーバーホールをすることにより細菌の増殖が深刻になる前に発見でき、早期に対策がとれることも大きなメリットだと言えます。

またインプラント治療後の合併症として代表的な「インプラント周囲炎」を予防できるというメリットもあります。インプラント周囲炎を発症すると周囲の組織が赤く腫れ上がったり、出血したり、膿が出たりして、悪化すると歯槽骨の吸収が起こることからインプラントが脱落してしまうことも少なくありません[1]。

定期メンテナンスでもインプラント周囲炎の予防はできますが、定期メンテナンスで除去しきれなかった細菌が繁殖する可能性もあるでしょう。インプラント治療におけるオーバーホールとは、定期メンテナンスでも気づくことができない問題を発見・予防する機会でもあります。

タイミング

インプラントのメンテナンスは数ヶ月に1回行われますが、オーバーホールを行うのは、一般的には1~2年に1度ほどとなっています。

できれば1年に1回は検討したほうが良いとされており、最低でも5年に1度はオーバーホールが必要とされているので、どのタイミングで行うかについては、通っている歯科クリニックに確認してみましょう。

お口の中の状態によっても最適なペースが変わってくるので、自分の場合はどれくらいのペースで受ければいいのか相談してみてください。

流れ

それではインプラント治療におけるオーバーホール全体の流れを確認していきましょう。

  1. インプラントの装置をすべて取り外す
  2. 装置をひとつひとつきれいに清掃する
  3. 装置を元通りに装着し直す

オーバーホールの流れは非常にシンプルで、装置を取り外したらすべてきれいに清掃して、元通りに装着し直すだけです。

ただしすべての装置を取り外すため、メンテナンスには時間がかかります。希望される場合は事前に歯科医院に伝えておかなければ、当日中にメンテンナンスが完了しないことがあるので注意してください。

オーバーホールの重要性について

オーバーホールは、インプラントを長持ちさせるためにも非常に重要な役割を持っています。もし、オーバーホールを行わなかった場合、自分で落としきれない汚れが蓄積してしまい、インプラントを失う結果になってしまう可能性もあるからです。

人工の歯であるインプラント自体は、虫歯になることがありません。しかし、その土台部分である骨や歯茎は、健康な自分の歯がある部分に比べてもろい状態であるため、定期的にきちんと汚れを取り除き、清潔な状態を保つ必要があります。

特にインプラントと歯茎の間や連結部分は汚れがたまりやすく、なおかつ落としにくいので、そこに歯垢が付着してしまうケースも多いです。細菌などが繁殖して歯茎が炎症を起こしてしまうと、インプラント周囲炎と呼ばれるトラブルに繋がります。

インプラント周囲炎のリスク

インプラント周囲炎とは合併症の一つであり、インプラントを支えている組織に炎症が起こっている状態です。歯周病のような症状が発生するのですが、厄介なことに初期の段階では自覚症状がありません。

進行するとインプラントを抜かなければならないので、できる限りインプラント周囲へのリスクを抑えることが、インプラントを健康的に長持ちさせるコツだといえるでしょう。そのためにも、徹底的な洗浄ができるオーバーホールを定期的に行うことが欠かせません

万が一、インプラント周囲炎が発生したとしても早期に発見、早期治療ができれば必ずしもインプラントを抜く必要はありません。

インプラントは丁寧にお手入れをしていれば10年以上、更には20年以上長持ちさせることが可能とされているので、できる限り長持ちさせるためにも、適切なメンテナンスを行うことが重要です。

丈夫なインプラントでもメンテナンスを怠ってしまうと、早期に状態が悪化してしまいます。インプラント周囲炎はインプラント治療後の合併症として、高い確率で発生すると言われています。

『インプラント周囲炎とは?原因と対策について』のページでインプラント周囲炎について詳しく解説していますので、参考にしてリスクについて知っておかれることをおすすめします。

オーバーホールにかかる費用の目安

インプラント治療では保険を用いることができないため、オーバーホールの費用も自己負担となります。

自由診療であることから、歯科クリニックによって設定されている費用が異なりますが、推奨されている頻度として1年に1回オーバーホール行った場合、一般的にはその他のメンテナンス費用なども含めて、年に20,000円前後の費用がかかると考えておきましょう。

高いと感じる方もいますが、もしも前述したインプラント周囲炎が発生し、インプラントを抜かなければならないようなことになれば、更なる費用がかかります。健康な状態で長持ちさせるためにも、歯科クリニックで推奨されている頻度でオーバーホールを行うようにしましょう。

また、インプラントには他にも様々なメンテナンスがあるので、それらもしっかり行っていくことが重要です。

自宅でのメンテナンスも重要


インプラント治療後のオーバーホールは重要なメンテナンスですが、オーバーホールをしていれば安心というわけでもありません。

自宅での毎日のメンテナンスも、オーバーホールと同じくらい重要です。自宅でのメンテナンスはブラッシングが中心となりますが、インプラント治療後は次のような歯科清掃器具を用いて、より丁寧に口内の衛生を保つようにしましょう。

  • 電動歯ブラシ
  • タフトブラシ
  • デンタルフロス
  • マウスウォッシュ

音波歯ブラシや超音波歯ブラシは通常の歯ブラシよりも歯垢や細菌を落としやすく、インプラント治療を受けられた方に適しています。またタフトブラシやデンタルフロス、マウスウォッシュを使うと、歯ブラシだけでは落としきれない細部の汚れも落とせるはずです。

自宅でのセルフメンテナンスの方法は『インプラントのメンテナンス方法!歯科医院で受ける場合と自宅で行う方法を紹介』で詳しく解説していますので、ぜひこちらの記事を参考にして正しいセルフメンテナンスを実践してください。

オーバーホールでリスクに備える

インプラント治療におけるオーバーホールとは何かについて解説しました。毎日、丁寧にブラッシングしたり、フロスを使ったクリーニングをしたりしていても、取り除けない汚れがあります。

天然歯の場合は、これらを定期的に歯科クリニックで除去してもらう必要があり、インプラントも同じです。オーバーホールで定期的に徹底的な洗浄を行うことにより、インプラント周囲炎などのリスクを抑えることができるので、1年に1回程度は行うようにしましょう。

[1]参照:児玉利朗「(PDF)インプラント周囲炎に対する治療法」日本口腔インプラント学会第30巻4号