インプラント治療では、いくつかの部品が使われることになります。そのうち「アバットメント」とは、どのような部品なのかについてご紹介しましょう。
アバットメントが持っている役割や使われている素材の種類、特徴などについて解説します。インプラント治療について理解を深めたうえで検討したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
インプラントにおけるアバットメントとは
インプラント治療で使われるアバットメントとは、あごの骨に埋め込むインプラント体と、人工歯をつなぐ役割を持つ部品です。インプラント治療では、外科手術を一度行う1回法と、2回行う2回法があります。
2回法の場合、1回目の手術で歯肉を切開してあごの骨にドリルで穴を開け、インプラント体を埋め込みます。縫合して数ヶ月後、あごの骨とインプラント体が結合したら2回目の手術です。
2回目の施術では埋入しておいたインプラント体にアバットメントを装着します。アバットメントを露出させた状態で数週間後、状態が落ち着いたら型取り、上部構造とも呼ばれる人工歯を装着して完了です。
1回法の場合、一度脳外科手術でアバットメントの装着まで行うことになります。
アバットメントの役割
そもそもアバットメントはどのような役割を持ったものなのでしょうか。代表的な役割を4つ解説します。
インプラント本体と上部構造の連結
アバットメントは、インプラント本体と上部構造である人工歯を連結させる役割を持つ部品です。直接インプラント体と人工歯を連結させるのではなく、間にアバットメントを挟むことにより、微調整ができようになります。
インプラントの中には、アバットメントとインプラント体がはじめから連結しているワンピースタイプと、それぞれ別になっているツーピースタイプの2種類があります。
ワンピースタイプの場合、アバットメントが破損するなどのトラブルが起こった場合、インプラント体もまとめて交換が必要です。一方、ツーピースタイプであれば、アバットメントの交換のみで済むといった違いがあります。
上部構造の保護
上部構造とは、人工歯として目に見える部分のことです。アバットメントは、上部構造を保護する役割を持っています。
インプラントの角度の補正
アバットメントを利用して、インプラントの角度を補正することが可能です。インプラント体は必ずしもまっすぐ埋入できるものではなく、場所によっては斜めに入れたほうが良いようなケースがあります。
斜めに入れたいインプラントに角度のついたインプラント体を装着することにより、上部構造の角度調整が可能です。
噛む力と噛む方向の補正
角度のついたアバットメントを装着することは、噛む力と噛む方向の補正にもつながります。ただ斜めにインプラントを入れてしまうと、噛み合わせに悪影響が出てしまうことがあるのです。
角度付きのアバットメントで角度を補正することにより、正しく噛む力を加えられるようになります。
インプラント治療に使用されるアバットメントの種類
アバットメントに使われる主な素材の種類は、チタン合金、金合金、ジルコニアの3種類です。それぞれの特徴についてご紹介します。
チタン合金
非常に高い強度がある素材です。耐久性が高いので、壊れにくい素材を探している方にぴったりだといえるでしょう。また、錆びにくい特徴もあわせ持ちます。
ただ、経年変化で歯茎が下がった場合、上部構造とアバットメントを連結している金属部分が見えてしまうことがあるのがデメリットです。
必ずしも歯茎が下がるとは言い切れませんが、インプラントは非常に長持ちするものということもあり、数年後、10年以上先のことなども考えておかなければなりません。
金合金
金を合金にした金属のことで、適度なやわらかさ、硬さがあります。チタン合金よりも適合が高いのが魅力ではありますが、チタン合金と同じく歯茎が下がった際に金属が見えてしまうことがあるのがデメリットです。また、費用についてもチタン合金よりも高価です。
ジルコニア
強度が高いことに加え金属を使用していないことから、金属アレルギーの心配がなく、歯の色に近い白色の素材です。チタン合金や金合金とは異なり、歯茎が下がっても金属部分が見えることもありません。
デメリットとしては、硬い素材であることから噛み合わせの際に周囲の歯を傷つける可能性があります。また、価格も高価です。
アバットメントの理解を深めて治療に取り組むもう
アバットメントは、インプラント体や上部構造と比べるとあまり注目されない部品です。しかし、今回ご紹介したように非常に重要な役割を持っています。
アバットメントの素材を選択する際には、各素材が持つメリットやデメリットなどについても理解したうえで納得できるもの選ぶようにしましょう。
費用については治療を受ける歯科医院によって変わってくるので、直接確認してみてください。