インプラント治療ではあごの骨に人工歯根を埋め込み、その上に上部構造と呼ばれる人工歯を接着させます。
人工歯根と人工歯を接着させる「セメントタイプ」とはどのような接着方法なのかについてご紹介しましょう。
その他の接着方法との違いや、セメントタイプで接着するメリット、デメリットなどについて参考にしてみてください。
インプラント治療で人工歯根と人工歯を接着させる方法
インプラント治療であごの骨に埋め込んだ人工歯根と人工歯を接着させる方法は、セメントタイプとスクリュータイプの2種類です。
それぞれどのような方法なのか解説します。
セメントタイプ
セメントタイプとは、セメント(歯科用の接着剤)を用いて人工歯根と人工歯を完全に接着する方法です。
インプラント治療において、人工歯根にはインプラント体とも呼ばれるフィクスチャーという部品を使います。
ここに人工歯根と人工歯をつなぐアバットメントという部品を取り付けるのですが、アバットメントと人工歯をセメントで接着する方法となります。
スクリュータイプ
スクリュータイプとは、インプラント体(フィクスチャー)に取り付けたアバットメントと人工歯をネジで固定する方法です。
そのため、人工歯にはネジ穴が空いているものを使用し、取り付けたあとにコンポジットレジンという素材で穴をふさぐのが一般的となります。
インプラント体と上部構造を接着する方法のうち、セメントタイプのほうが古く、スクリュータイプは新しい様式です。
セメントタイプのメリット
セメントタイプで人工歯根と上部構造を接着するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
審美性に優れる
セメントタイプは人工歯にネジ穴を開ける必要がないため、審美性に優れています。
特に見た目を重視してインプラント治療に取り組みたいと考えている方にとって、メリットのある方法だといえるでしょう。
インプラント同士の並行を保てる
複数のインプラントを埋入しようと考える場合、インプラント同士を並行に保ちたいと考えた際にもセメントタイプのほうが向いているケースがあります。
アバットメントに接着するというシンプルな形であるため、スクリュータイプのように作りが複雑なタイプよりインプラント同士の並行を保ちやすいのがメリットです。
ずれにくい
セメントタイプはアバットメントに接着剤でしっかりと固定するため、ずれにくいメリットがあります。完全に固定されているのが特徴です。
セメントタイプのデメリット
セメントタイプのインプラント接着にはデメリットもあります。以下に注意しておきましょう。
人工歯を外せない
セメントでしっかり接着してしまうため、何かトラブルなどが発生した際に人工歯のみを取り外すことができません。
もし、インプラント周囲炎などのトラブルが起こると、奥のほうを洗浄しなければならないような事態に陥ってしまうことも考えられます。
その場合、被せ物である人工歯を壊して治療しなければならないのです。
一度壊してしまえば作り直しが必要であるため、何かトラブルが発生した際に治療費が高くかかってしまうことも考えられます。
スクリュータイプの場合は被せ物を傷付けることなく取り外してインプラント周囲炎の治療が可能です。
これはそれぞれのタイプの大きな違いだといえるでしょう。
セメントが炎症の原因になる可能性がある
接着する際に使うセメント成分が炎症を引き起こしてしまう可能性があります。
もし、炎症が悪化した場合には、インプラントそのものに悪影響を与えてしまう可能性もあるのがデメリットです。
セメントタイプとスクリュータイプどちらを選ぶべき?
セメントタイプとスクリュータイプは、それぞれ特徴が異なります。
一般的に審美性を重視したい、定期的にメンテナンスに通えて日々のブラッシングにも自信があるといった方は、セメントタイプでも大きな問題はないでしょう。
メンテナンス性を重視したい方や、万が一のトラブルに備えたい方などは、スクリュータイプを検討してみてはいかがでしょうか。
また、費用については構造が複雑であるスクリュータイプのほうが高く設定されていることが多いです。
費用を重視している方にもセメントタイプが向いているといえるでしょう。
ただし、奥の洗浄が必要になった際に上部構造を作り直す費用がかかることについては、理解しておかなければなりません。
セメントタイプ・スクリュータイプは比較して検討が必要
セメントタイプとスクリュータイプの違いなどについて解説しました。
それぞれメリット、デメリットが異なります。インプラントは一度治療すればそれだけでずっと良好な状態を保てるものではありません。
将来的なトラブルの可能性に備えて、スクリュータイプについても検討してみると良いでしょう。
セメントタイプを検討している方は、医師に相談のうえで決断をしたほうが失敗しにくいはずです。