インプラント治療といえば、あごの骨にドリルで穴を開けてネジ型の土台を埋め込む治療を想像する方が多いですが、最前線のインプラント治療と呼ばれているのが、骨を削ることなく治療ができるオーダーメイドインプラントです。
従来の治療に比べて患者の身体的負担を抑えることができます。治療法の概要や従来のインプラント治療と比較したメリット、治療の流れについて解説しましょう。
インプラントにおけるオーダーメイド治療の概要
インプラントのオーダーメイド治療は、従来の治療よりも患者に適したインプラントの埋入ができるのが大きな特徴です。従来のインプラント治療でも、各メーカーが製造している物の中から患者にとって向いているものを選択することはできましたが、メーカーの規格で作られたものから選択しなければならず、一人ひとりに最も適したものを選択するのは難しいことでした。
一方オーダーメイド治療では、3DCT画像で患者一人ひとりの骨の形に合わせたインプラントを用いて治療を進めることができるため、その人にとって最も適しているものを選択することができるのです。
なんといっても大きな魅力といえるのが、従来の治療とは異なり、あごの骨をドリルで削ることなく治療を完了させることができる点といえます。CTを用いて口腔内の状態を3Dスキャンし、元の歯根と形が合致するインプラントを作成できるため、それをはめ込むだけでしっかりと固定することができるのです。
ただ抜歯したあとに、事前に作成しておいたインプラントを埋入する治療であるため、歯が残っている方でなければ選択できません。この点が従来のインプラント治療と異なる点なので、おさえておきましょう。
オーダーメイド治療のメリット
インプラントのオーダーメイド治療を受けることにより、以下のようなメリットを感じることができます。
顎骨を削ることなくインプラントを装着することが可能
失ってしまった歯の歯根と同じ形のインプラント体を作成して使用するため、あごの骨にドリルで穴を開ける必要がありません。「ただ埋め込むだけでは抜けてしまうのでは」と心配になる方がいますが、インプラントのオーダーメイド治療で使用されているチタンやジルコニアは骨と結合する特徴を持っているため、簡単に抜けることはないのです。
痛みや身体への負担を軽減できる
従来のインプラント治療では骨を削る大掛かりな外科手術が必要でしたが、オーダーメイド治療の場合は必要なくなるため、手術に伴う痛みや不安を抑えることが可能です。また、通常のインプラント治療と同じく、静脈内鎮静法も可能であるため、インプラント治療に対して不安や恐怖を感じている方にもぴったりといえるでしょう。
短期間での治療が実現可能
従来のインプラント治療の手術時間は短くても30分以上でしたが、オーダーメイド治療の場合は1分~3分程度で埋入が可能です。手術に伴う時間を抑えられるので、このあたりも精神的な負担や時間的な負担を抑えることに繋がります。
歯周病発生リスクの軽減
埋入したインプラントの周辺に発生しやすい、インプラント周囲炎というトラブルがあるのですが、これはインプラントを埋入するために削った骨と埋入したインプラントとの間に隙間が発生するために、歯周病菌が繁殖してしまうことによって発生しやすいトラブルです。オーダーメイド治療では、完全に隙間なくインプラントを埋め込むことができるため、歯周病のリスクを抑えることができます。
できるだけ歯周病に備えたいと考えている場合にも、オーダーメイド治療が向いているでしょう。インプラント周囲炎については『インプラント周囲炎とは?原因と対策について』で詳しくご紹介しています。インプラントを失ってしまう原因の一つでもあるため、インプラント治療前にどのようなものか確認しておくことをおすすめします。
自然な歯並びの実現
オーダーメイドのインプラント治療では、もともとの歯根と同じ形のインプラントを埋入します。そのため、歯が抜けてできた穴にキレイに治まり、自然な歯並びに近づけられるのがメリットです。
通常のインプラント治療でも自然な見た目の歯を手に入れることができますが、より自然な歯並びを求めている方にも向いている治療法です。
治療後の腫れを軽減できる
従来のインプラント治療では、骨にドリルで穴を開ける刺激によって治療後に腫れが起こってしまうことがありました。ですが、穴を開けないオーダーメイド治療であれば腫れのリスクを大きく抑えることができます。
オーダーメイド治療の流れ
インプラントのオーダーメイド治療全体の流れについておさえておきましょう。以下のように進みます。
1.3DX線(レントゲン)撮影
カウンセリング後、歯科用CTである3DX線を用いて撮影を行い、歯根の形を正確に確認します。その後、1ヶ月ほどの期間をかけてオーダーメイドで埋め込むインプラント作成します。
2.抜歯・インプラント設置
インプラントを埋入する部分の抜歯を行います。その後、事前に抜歯する歯の歯根の形と同じになるように作成していたインプラントを埋入します。
3.仮歯の固定
埋入したインプラントに仮歯を設置します。インプラントを固定するため、隣の歯と仮歯の結合が必要です。
4.永久クラウンへの交換
インプラントを埋入した後、インプラント素材がチタンの場合は3ヶ月ほど、ジルコニア素材の場合は6ヶ月ほどかけて骨と結合するのを待ちます。結合が確認できてから人工歯部分を永久クラウンに交換して完了です。
自分にとって最適なインプラントを埋入できる
インプラントのオーダーメイド治療についてご紹介しました。従来の治療とは異なり、あごの骨を削る必要はありませんし、腫れなども発生しにくいことから、体への負担を抑えられる治療です。
ただし、抜歯直後にインプラントを埋入する必要があるため、もともと歯を失っていた部分には対応できないなど選択できない方もいるので、自分に適している治療法かどうかについて、歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。