インプラント治療で手に入る歯は永久歯に次ぐ第三の歯とまで言われており、快適に食事をしたいと考えている多くの方から選ばれています。
しかし、すべての方がインプラント治療を選択できるわけではありません。持病によっては治療ができない場合もあります。
具体的にインプラント治療が難しい持病として、どういったものが挙げられるのかについてご紹介しましょう。
持病があるとインプラント治療が難しい場合も
持病の種類や状態によってはインプラント治療が難しいケースがあります。特に注意が必要なのが、全身疾患です。これは、インプラント治療が外科治療であることが関係しています。
全身疾患で状態が良好でない場合、外科手術に耐えうる体力がなく、リスクを伴う可能性が高いです。また、治療自体はできたとしても回復に時間がかかってしまう可能性もあります。
どの程度であれば治療ができるのかについては、医師によって判断が異なります。全身疾患がある場合は決して治療ができないとはいえません。
まずはカウンセリングなどで相談してみてはいかがでしょうか。
インプラント治療が難しい主な持病
具体的にどのような持病がある場合に、インプラント治療が難しくなるのでしょうか。代表的な持病について解説します。
糖尿病をお持ちの方
糖尿病は血糖値のコントロールが難しく、手術後の低血糖や高血糖の問題があるため、インプラント治療が難しいとされています。さらに、インプラント周囲炎発生のリスクも通常の方に比べて高いです。
適正に糖尿病の状態がコントロールできている方でなければ、インプラント治療は受けられません。
インプラント体埋入手術が可能なのは、空腹血糖時140 mg/dL以下、ケトン体(-)、HbA1c:6.9%(NGSP 値)未満が基準です。歯科医師だけではなく、糖尿病の主治医とも相談しながら検討していくことになります。
高血圧をお持ちの方
高血圧の方は合併症の恐れがありますが、主治医の指示通りに通院・薬の服用をしていて、状態が安定していればインプラント治療は不可能ではありません。
ただし、治療に伴う緊張で血圧が上昇することもあるため、このあたりも考慮した治療が必要です。
場合によっては、手術によるストレスで高血圧になるのを軽減するため、静脈内鎮静法を選択することもあります。
心臓病をお持ちの方
心臓病をお持ちの方は、主治医、歯科医師とよく相談が必要です。例えば、心筋梗塞の発作を起こしたことがある方の場合、1ヶ月以内のインプラント治療はハイリスクとされています。
その後については、心臓の合併症があるか否かによって治療可能かが変わります。
狭心症については、投薬などで適切にコントロールができればインプラント治療が可能です。
腎臓病をお持ちの方
腎機能障害、腎不全などをお持ちの方は免疫力が低下しているため、傷が治りにくい可能性があります。詳細な検査を行ったうえで判断が必要です。
一般的に、腎機能障害が重度である場合および腎不全による透析を受けている患者の場合、インプラント治療はできません。
肝臓病をお持ちの方
急性期や末期でない限り、インプラント治療が悪影響をもたらしてしまう心配はないとされています。
しかし、肝硬変の場合は出血傾向がありますし、肝機能障害は傷の治りが遅くなるケースが多いです。
一般的に重篤な肝機能障害がある場合、インプラント以外の治療を選択することになります。
骨粗しょう症をお持ちの方
骨粗鬆症の治療でビスフォスフォネート系の薬剤を服用している、服用していた方にインプラント治療は向きません。歯科治療を契機として部分的に骨が壊死してしまう恐れがあるからです。
ビスフォスフォネート系薬剤で治療を行っていない方については治療できる可能性もあるため、相談してみましょう。
金属アレルギーをお持ちの方
インプラント治療には金属アレルギーを起こしにくいチタンの素材が使われているため、それほど大きな心配はありません。
しかし、金属アレルギーの方はパッチテストやリンパ球刺激試験などで安全を確認したうえで治療が必要です。
重度の歯周病をお持ちの方
口腔衛生指導、専門家による口腔清掃などを行い、歯周ポケット内の炎症の残存部位が20%以下であれば歯周病でも治療は可能とされています。
しかし、症状が重い場合は、先に十分な歯周病治療が必要です。
がんの治療中の方
がん患者で治療中の方については、インプラント以外の治療が取られることが多いです。特に骨吸収抑制薬を用いた治療を行っている場合、インプラント治療はできないことがあります。
ただ、急性期や末期以外であれば治療できるケースもあるため、医師に相談してみましょう。
参考:公益社団法人 日本口腔インプラント学会 編「口腔インプラント治療指針2020」
まずはカウンセリングで相談を
持病の種類によってはインプラント治療が難しいケースがあります。
しかし、状態が安定していたり、適切に数値のコントロールができていたりするようであればインプラント医療ができる場合も多いです。
まずは、カウンセリングで持病について相談することから始めてみてはいかがでしょうか。