インプラント治療前に歯周病治療を行う必要がある理由とは?

インプラント治療を行う前に歯周病治療を行わなければならないケースがあります。なぜ先に歯周病の治療をしなければならないのかについて解説しましょう。
また、インプラント治療を成功させるためにおさえておきたいポイントや、インプラント治療を受けることによってどのようなメリットがあるのかについても参考にしてみてください。

インプラント治療前に歯周病治療が必要になる理由

歯周病患者の方がインプラント治療を検討した場合、先に歯周病の治療をする必要があります。それではなぜインプラント治療前になぜ歯周病治療が必要となるのか、その理由について3つの観点から解説をしていきます。

インプラント手術自体ができない

インプラント治療前に歯周病治療を行わなければ、インプラント手術自体が行えないことが最大の理由です。歯周病を先に改善しておかないと、インプラント治療におけるトラブル発生のリスクが高くなってしまうためです。歯周病治療を怠ってしまうとインプラントが細菌に感染しやすくなるため、徹底した歯周病治療が必要不可欠だといえます。

インプラント治療では歯肉の切開は顎の骨に穴をあける手術が伴います。物理的に口内に傷をつける手術を行うと傷口から歯周病菌が感染するリスクが高まることに。そのため原則的に、インプラント手術は歯肉や顎の骨が健康でなければ行えません。

インプラントの安定性が低くなる

たとえ歯周病治療を行わずインプラント手術を行ったとしても、インプラントの安定性が低くなるため予後の結果が悪くなりがちとなります。一つ前の項目で歯周病菌がインプラントに侵入することがあると解説しました。インプラント内部で細菌感染が起こるとインプラントが結合されにくくなり、安定しないことが少なくありません。

歯周病とは歯肉に侵入した細菌が炎症を引き起こしている状態のことを指します[1]。歯肉に細菌がいる状態でインプラント治療を行うと、インプラントにも細菌が感染しやすくなり、インプラントの結合に不具合が起こる可能性が高まります。そのためインプラント治療前には歯周病治療を行ってインプラントの安定性を高めることが必要です。

インプラント周囲炎が発症するリスクが高くなる

またインプラント治療後の代表的なトラブルであるインプラント周囲炎を発症するリスクが高くなるのも理由のひとつです。インプラント治療後に、インプラント周囲炎と呼ばれる炎症が発生することがあるのですが、大きな原因は歯周病原細菌によるものです。

インプラント周囲炎を発症すると一般的にインプラント周囲の組織が赤く腫れ上がったり、出血や排膿が見られたり、顎の骨が吸収されて減少したりする症状が見られます[2]。歯周病を発症していて、口の中に歯周病菌がたくさんある状態でインプラント治療を行うとインプラント周囲炎が発生しやすくなり、結果としてインプラントが抜けてしまう原因になります。

インプラント周囲炎を予防するための方法として有効なことが、インプラント治療前に歯周病治療を徹底しておくことだと言えます。インプラント周囲炎は短期間で悪化しやすいので、できる限り予防策を取っておくことが重要です。

インプラント治療後に起きやすい合併症であるインプラント周囲炎についてより詳しく知りたい方は、『インプラント周囲炎とは?原因と対策について』のページを参考にしてください。

歯周病の治療方法


それではインプラント治療前に行うべき歯周病治療にはどのような方法があるのでしょうか。主に実施される2種類の方法について解説します。

薬を使った内科治療

まずは薬を用いた内科的治療法から解説します。内科的治療とは「位相差顕微鏡」と呼ばれる顕微鏡で口内の菌を検査した後に、菌の種類に応じた抗菌薬を使用して治療を行うことです。

薬を使う内科的歯周病治療は、歯周病の進行度や症状に対して炎症をコントロールすることを目的として行われます。ただし薬剤を使用するにあたり、投与量・投与期間・投与時期・副作用などを考慮しながら投与する必要があるため、少々適用が難しい治療法であるとも言えるでしょう[3]。

外科治療

もう一つの代表的な治療方法は外科的治療です。インプラント治療前に実施される歯周病治療はほとんどの割合で外科治療が適用されます。外科治療とは歯と歯肉の間にこびりついた歯石や歯周ポケットを除去したり、組織を修復したりして歯を長寿化させる物理的治療法です。

歯周病治療で適用される外科治療には主に次の5種類があります。

  • 歯周ポケット掻爬術:軽度歯周病で適用される歯周ポケットに蓄積された歯石と歯垢を除去する方法
  • フラップ手術:歯肉を切開して直接的に歯石を除去して歯周ポケットをなくす方法
  • 歯周組織再生療法(GTR法):歯肉を切開して歯石・歯垢・歯周組織を除去し保護膜により歯周組織の再生を促す方法
  • 歯周組織再生療法(エムドゲイン法):GTR法に加え初めて歯が生えたときのような口内環境を擬似的に作りだす方法
  • 歯周組織再生療法(骨移植法):GTR方に加え失われた歯槽骨の代わりに自家骨や人工骨を移植し補う方法

以上のような方法で歯周病の改善をはかり、失われた部分を補うのが外科治療です。

歯周病患者がインプラント治療を成功させるためのポイント

歯周病の方がインプラント治療を成功させるためには、歯周病の治療を徹底して行うことや再発リスクの排除、術後のメンテナンスが重要です。

術前に行う歯周病治療の徹底

歯周病の状況が悪化しておらず、非常に軽度である場合はインプラント治療と歯周病治療を同時進行できる場合もありますが、基本的にはインプラント治療前に徹底した歯周病治療を行います。
そのため、歯科医院を選択する際にはインプラント治療の実績があるのはもちろんのこと、歯周病治療の分野でも評価されている歯科医院を選択することが重要です。

歯周病治療をすることによって口の中の細菌を減らすことができます。歯周病を改善させるためには、日々のブラッシングを丁寧に行うなどの対策も必要になってくるため、どのようなケアが必要か歯科医院で相談してみましょう。歯周病の状態がひどい場合はインプラント治療開始までに時間がかかることになります。

歯周病にともなう再発リスクの排除

歯周病にかかってしまっているのであれば、その原因を突き止め、再発を防ぐことが重要です。
歯周病の最も大きな原因はプラークと呼ばれる細菌の塊ではありますが、その他にも喫煙や不規則な食生活が関連していることがあります。

更には、歯ぎしりや食いしばりの癖、詰め物や被せ物などの問題、噛み合わせなどが関係していることも多いです。該当するものがある場合は、それらを改善しておくことにより歯周病の再発リスクを抑えることが可能です。結果的にはインプラント治療の成功にもつながります。

術後の徹底したメンテナンスの実施

術後のメンテナンスは自宅でのセルフケアと歯科医院での定期メンテナンスの2種類が重要です。

歯周病になってしまった方はブラッシングに問題がある可能性が高いと考えられます。セルフメンテナンスのカギとなるのは歯ブラシ・フロス・デンタルリンスを用いた毎日の適切なケア。特に基本であるブラッシングでは適切な歯ブラシを使い、歯の表と裏、歯と歯の間もしっかりとくまなく磨くようにしてください。

ただし自宅で行うブラッシングやセルフケアでは落としきれない汚れもあるので、定期的に歯科医院に通い、メンテナンスを受けましょう。歯科医院での定期メンテナンスでは歯や歯肉のチェックだけでなく、噛み合わせの確認や歯石・バイオフィルムの除去なども行われます。インプラント治療後の定期メンテナンスは、インプラント保証の適用条件となっていること多いため欠かさず受けるようにしてください。

インプラントは手術をしたらそれで終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要です。良好な状態を維持するためにも必ず行うようにしましょう。メンテナンスについてより詳しく知りたい方は、『インプラントのメンテナンス方法!歯科医院で受ける場合と自宅で行う方法を紹介』で解説していますのでこちらのページを参考にしてください。

歯周病患者がインプラント治療を受けるメリット

歯を失った場合には他にもブリッジや入れ歯などの選択肢がありますが、これらと比べてもインプラント治療はメリットがあります。ブリッジや入れ歯にする場合、失った歯を補うため周囲の歯を支えとする必要があるのですが、歯周病が悪化している場合、その支えとなる歯が十分な機能を果たせないことが多いです。
インプラントの場合は、周囲の歯に影響することなく顎の骨を土台として人工歯を取り付けることができるため、周囲の歯の状態に左右されません。

ブリッジや入れ歯が難しいと判断された場合は、インプラント治療について検討してみてはいかがでしょうか。
また、周囲の歯が支えとして問題ないとしても、支えとなっている歯には負担がかかります。場合によっては支えとなったことで周囲の歯の寿命が縮まってしまう可能性があるのですが、インプラントであれば他の歯に負担をかけることがないのが大きなメリットです。

将来的に自分の歯をできるだけ多く残したいと考えた際にも、他の歯に影響しないインプラントは魅力的な治療だといえるでしょう。

インプラント治療前は徹底した歯周病治療が重要

インプラント治療前に歯周病治療を行ったほうが良い理由や、必要性について解説しました。歯周病が悪化している場合、インプラント治療にたどり着くまでに時間がかかってしまうことがありますが、先にきちんと歯周病治療を行っておかないと、インプラント治療に悪影響を与えてしまう可能性があるため、注意が必要です。
インプラント治療だけでなく、歯周病治療も得意としている歯科医院を選択し、相談してみましょう。

[1]

参照:e-ヘルスネット「歯周疾患の症状・原因・進行」

[2]

参照:児玉利朗「(PDF)インプラント周囲炎に対する治療法」日本口腔インプラント学会第30巻4号

[3]

参照:王宝禮「(PDF)口腔内科的発想による歯周病抗菌薬物療法」2008年度口腔四学会合同研修会(社)日本口腔外科学会第31・32回教育研究会