インプラント治療の安全性とリスクを専門家が解説

インプラント治療に不安を感じている方のために、安全性について解説します。リスクが高い方や心配されるトラブル、対処法などについて理解しておくと、インプラント治療に対する不安を取り除くことができるでしょう。

また、できる限り安全性の高いインプラント治療を受けるためには、どのようなポイントに注目して歯医者探しをすれば良いのかについてご紹介するので、参考にしてみてください。

インプラント治療の安全性について

不安を抱かれる方もいるようですが、インプラント治療は安全です。なぜインプラント治療が安全だと言えるのか、その理由について3つのポイントから解説します。

使用する素材

インプラントには金属アレルギーを引き起こすリスクの低い「チタン」が使用されています。チタンは金属ですが人体との親和性が高く、骨と接合されやすいとされやすく耐食性にも優れています。

チタンは骨に取り込まれやすいことからインプラントの定着性が高くなり、まるで天然歯のような安定性を発揮するのです。

しかしやはり金属アレルギーについて不安を抱かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

金属アレルギーとインプラントの関係性についてさらに知りたい方は、『金属アレルギーの方のインプラント治療について解説』で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

参照:澤瀬 隆, 平 曜輔「(PDF)歯科医療における金属材料のニーズの現在と未来」まてりあ第53巻第4号(2014)

平均的な寿命

インプラント治療の安全性の高さは、インプラントの平均的な寿命の長さでも証明されています。インプラント治療を受けた方を調査すると、治療完了から10年が経過しても92~95%の割合でインプラントを使い続けていると報告されているためです。

つまりインプラント治療を受けた方の多くが、10年以上にも渡り特に問題なくインプラントを使い続けていると判断できます。

日本でインプラント治療が開始されたことは、臨床実績の少なさやチタンが使われていなかったことからトラブルが起きたこともありました。

しかし現在ではトラブルも減り、インプラントを安全に使い続けられるようになったのです。

インプラントの寿命についてさらに知りたい方は、『インプラント治療後の寿命と長持ちさせる方法を解説』で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

参照:日本歯科医学会編「(PDF)歯科インプラント治療指針」

他の治療法よりも優れている点

他の治療法と比較すると、インプラント治療の安全性が高いことがおわかりいただけるはずです。義歯としてよく用いられる「入れ歯」と「ブリッジ」との違いを見てみましょう。

インプラント 部分入れ歯 ブリッジ
健康な歯への影響 なし あり あり
咀嚼力 変化なし 低下する わずかに低下する
寿命 半永久的 5~6年 7~8年

部分入れ歯やブリッジは他の歯を支えにして装着するため、健康な歯に負担を強いることになります。さらに咀嚼力が低下したり、硬い食べ物が食べにくくなったりすることでストレスを感じることもあるでしょう。

しかしインプラントであれば天然歯と同じように使えるため、健康な歯への影響もなく、咀嚼力が低下することもありません。

健康な歯に負担をかけるその他の治療法と比べると、インプラント治療の方が安全だと言えるのではないでしょうか。

入れ歯・ブリッジ・インプラントとの違いをもっと詳しく知りたい方は、『【必読】インプラント・入れ歯・ブリッジの違いを徹底比較』で詳細に解説しているのでこちらを参考にしてください。

インプラント治療における安全性とリスクについて

インプラント治療はその他の治療と比べても安全だと言えますが、リスクがないわけではありません。インプラント治療にはどのようなリスクがあるのか、条件やタイミングごとに解説していきます。

リスクが高い人の特徴

インプラント治療を行うにあたり、リスクが高いとされるのは以下に該当する方です。

  • 18歳以下で体が成長を終えていない
  • 妊娠中の方
  • 全身疾患がある方
  • 顎の骨が薄い、弱い方

基本的に18歳未満の方はまだ体が成長を終えていない可能性があるので、インプラント治療はできません。成長途中で顎の骨にインプラントを打ち込むと、体に悪影響を与えてしまう可能性があるからです。

また、妊娠中の方は身体への影響が心配される他、お腹が大きくなると長時間診察台で横になるのが難しくなることから、妊娠時期の治療は避けたほうが良いとされています。

それから、全身疾患を抱えている方の中には、治療が適していない方もいるので、治療が可能かどうかについては歯科医師、持病の担当医師に話を聞いてみなければなりません。

他にも、インプラントを埋め込む土台となる顎の骨が薄かったり弱かったりする人、そのままではインプラント治療ができないような歯周病・虫歯がある人などもリスクが高いといえます。

手術中のリスク

インプラント治療において、人為的なミスによって口の中が傷付けられてしまうことがあります。

例えば、神経が傷ついてしまったり、ドリルで顎の骨に穴を開ける際に摩擦によってオーバーヒートと呼ばれる骨の火傷が発生してしまったりするリスクがあるのです。

それから、上顎内には空洞があるのですが、インプラントの治療中に上顎洞粘膜に傷がついてしまうとそこから細菌が入り込み、上顎洞炎と呼ばれる炎症が起こってしまうことがあります。

また、埋入したりインプラントが上顎洞内に迷入(落ち込むこと)したり、本来埋入すべきだった場所とは異なる場所に埋め込んでしまうトラブルもあります。

これらのリスクを防ぐため、ほとんどの歯科医院ではあらかじめ歯科用CTを活用したうえで、立体的に口腔内を調べる他、オーバーヒートを防ぐためにドリルと骨の接触箇所に十分な量の水をかけるなどの対策をとっています。

しかし、どこまで詳細に検査してくれるのか、慎重に治療を行ってくれるかはクリニックによって異なるのが事実です。

手術後のリスク

インプラント治療は問題なく終わったものの、後から以下のようなトラブルを感じる方がいます。

  • インプラント本体が上手く定着しない/ぐらつきがある
  • インプラント本体が折れる・抜け落ちる
  • 上下の歯がうまくかみ合わない
  • 手術部位に腫れや痛みが発生する

これらのトラブルを防ぐためには、豊富な専門知識と経験を有している歯科医師のもとで治療を受けることが重要です。また、手術後は医師に指示された通り過ごすようにしましょう。

指示された注意点などを守らないと、早期にインプラントの状態が悪化してしまう恐れがあります。

インプラントは定期的にメンテナンスをすることが大切なので、メンテナンスを欠かさないようにしてください。

メンテナンスには自宅で行うセルフメンテナンスと、歯科医院で受ける定期メンテナンスの2種類があります。

2種類のメンテナンス方法を知りたい方は、『インプラントのメンテナンス方法!歯科医院で受ける場合と自宅で行う方法を紹介』で解説しているので参考にしてください。

インプラント周囲炎

インプラント治療後のリスクとして「インプラント周囲炎」に罹患することがあげられます。

インプラント周囲炎とはインプラント装着部位周辺の組織が細菌に感染して発症される歯周病のようなもので、炎症により土台となる骨が吸収され減少し、インプラントの脱落が起こる可能性のある疾患です。

およそ10~50%の確率で発症するとされています。

前項で解説したメンテナンスを怠り、口内が不衛生な状態になるとインプラント周囲炎を発症する確率が高くなるとされます。

インプラント周囲炎はインプラント治療における最大のリスクとも考えられるため、詳しい情報を知りたいと思われる方は『インプラント周囲炎とは?原因と対策について』で解説しているので、こちらのページを参考にしてください。

参照:萩原 芳幸「(PDF)補綴装置・歯の延命のためにインプラント周囲炎治療」日本補綴歯科学会誌第7巻第1号

安全性の高いインプラント治療を提供してくれる歯医者の探し方

どこでインプラントの治療を受けようか悩んでいる方は、以下のポイントを満たしている歯科医院を選択しましょう。

設備が充実している

医療の現場は次々に新しい設備が開発されているため、積極的に最新機器などを導入している歯科医院のほうが安心です。どのような設備が導入されているかはホームページで確認できる場合もあります。

実績豊富な医師がいる

歯科治療全般においての実績だけでなく、インプラントの治療経験が豊富な医師を探しましょう。これまでの実績や経験を事前にインターネットで確認しておくことをおすすめします。

感染症対策にしっかり取り組んでいる

感染症対策をしっかりとっている歯科医院を選択しましょう。治療後にインプラント周囲炎という歯周病に似た感染症を発症してしまうとインプラント周辺の状態が大幅に悪化してしまう可能性があります。

丁寧なメンテナンスを行っている

インプラントの手術が終わったらそれで終了ではなく、メンテナンスも含めて丁寧な対応をしてくれる歯科医院だと安心です。定期メンテナンスが欠かせないインプラントだからこそメンテナンス意識の高い歯科医院を選びましょう。

インプラントは安全な治療法と理解しよう

インプラントにはリスクもありますが、厚生労働省による報告を見ても多くの方が10年以上使い続けており、骨と結合されやすいチタンが使用されていることからも安全性の高い治療法だと言えます。

実績が豊富で信頼できる歯科医院を選びリスクを避けるためのセルフケアを徹底すれば、インプラント周囲炎や腫れ・痛みなどのリスクも軽減されるはずです。

外科手術を伴うことから不安がる方もいらっしゃいますが、入れ歯やブリッジは健康な歯に負担をかける可能性の高い治療法なので、長期的な視点で見るとインプラント治療の方が安全だとも言えます。

治療法で迷っている方は、インプラントも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。